聖典翻訳事業

浄土真宗聖典英語翻訳委員会

聖典翻訳委員会

翻訳委員会の前身となる翻訳研究部が、1974年に発足しました。当時、浄土真宗本願寺派として定められた英語翻訳聖典は存在せず、各開教区では伝道教化の基礎となる英語訳された真宗聖典の完成が待ち望まれていました。そこで第24代即如門主が法灯を継承されたことを機縁とし、宗門発展計画の一環として、1978年より「英文真宗聖典」の翻訳・出版事業の推進に取り組むこととなりました。「英文真宗聖典シリーズ」(Shin Buddhism Translation Series)の第1号として、Letters of Shinran(『末灯鈔』)が発刊されます。その後、親鸞聖人の著述が順次、出版されるに至りますが、その道のりは困難と試行錯誤の連続でした。翻訳作業はネイティブスピーカーを含む数名の翻訳研究員によって構成され、まず翻訳研究員が草稿を作り、これを宗教、仏教、真宗の学識者が校閲を行います。校閲を終えた草稿は、再度、翻訳委員会に戻され、さらに推敲を重ね、翻訳の完成という大まかな流れになっていました。一貫して翻訳事業の二大方針として掲げられていたのが「正確さ」と「読み易さ」ということでした。訳文が正確であるだけでなく、読者にも読み易く、かつ内容が理解し易くあることでした。それらは全て親鸞聖人のお言葉の一つひとつを誤りなく伝える上においての配慮に他なりませんでした。

 

1997(平成9)年、ついに宗祖著述の完訳が成し遂げられ、これらすべてを1冊(上下巻)にまとめたThe Collected Works of Shinran(『親鸞聖人著作集』)が刊行されました。翻訳事業の開始より約20年の月日を経ての完成でした。

 

「英文真宗聖典」第一次翻訳出版事業は、『著作集』の発刊をもって完了し、一旦終了となりますが、時を開けずして翌年の1998年、「第二次英文真宗聖典」翻訳出版事業がスタートします。まず蓮如上人500回遠忌法要の記念事業としてLetters of Rennyo(『御文章』)が出版され、以後10年近くをかけて浄土三部経の翻訳に取り組み、2003年The Three Pure land Sutras Volume I(『浄土三部経 第一巻 観経・阿弥陀経』)、2009年にThe Three Pure land Sutras Volume II(『浄土三部経 第二巻 無量寿経』)の発刊で一つの区切りを迎えます。

 

その後、次なる取り組みとして七祖聖教の翻訳事業に着手。2012年にThe Pure Land Writings Volume I  The Indian Masters(『七祖聖教 第一巻 龍樹・天親編』)、2018年にはThe Pure Land Writings Volume Ⅱ Tanluanが(『七祖聖教 第二巻 曇鸞編』)が発刊となり、現在は『安楽集』の翻訳に取り組んでいます。

 

 

 

浄土真宗聖典ポルトガル語翻訳委員会

浄土真宗聖典のポルトガル語翻訳の始まりは、南米開教区の開教使であった故ムリロ・ヌーネス・デ・アゼベード師が北米教団発行の「Seiten(聖典)」をポルトガル語に翻訳したものを、即如門主が第1回目の南米ご巡教の折に寄贈され、それを日本に持ち帰られたところからスタートしました。英語仏典翻訳の世界的権威である稲垣久雄博士を委員長に招聘し、1984(昭和59)年、「ポルトガル語真宗聖典校閲委員会」が発足しました。ポルトガル語の聖典翻訳は現地での開教の根幹にかかわる事業であり、ブラジルにて行う方が望ましいのではとの声もありましたが、広大な国土の中で伝道活動を行っている開教使が取り組むには、時間や場所を定めての定期的な開催が非常に難しく、日本国内にて翻訳作業が進められることとなりました。

 

ムリロ師が翻訳を終えていた『三帖和讃』『歎異抄』「末灯抄」『正信偈』については、日本語の原文と照らし合わせて校閲が行われました。その先の翻訳作業は、先に英語訳されているものをネイティブスピーカーの開教使がポルトガル語に翻訳し、出来上がった草案原稿を仏教・真宗・英語聖典翻訳およびポルトガル語の専門家が校閲、推敲を重ねるという手順がとられ、当初は原稿を二国間で往復させながら作業が進められました。

 

2004年にはポルトガル語専門職員が加わり、ブラジルとの意見交換を頻繁に行いながら翻訳校閲会議を定期的に開催する体制が整いました。2009(平成21)には「浄土真宗聖典ポルトガル語翻訳委員会」に名称変更し再編成を行いました。

 

これまでに『三帖和讃』『歎異抄』『末灯鈔』『正信偈』の翻訳が完成しており、2004年には『阿弥陀経』、2007年に『観無量寿経』を出版。そして2016年に『無量寿経』の翻訳を出版し、「浄土三部経」のポルトガル語訳が完成しました。今後は親鸞聖人の主著『教行信証』の翻訳を完成させることを視野に入れ、現在は『浄土文類聚鈔』に取り組んでいます。

 

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